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あとがき
岡本 仁
pp.92
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200111
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2014年度のノーベル生理学・医学賞は「動物の位置情報処理にかかわる神経細胞群の発見」を行ったロンドン大学のJohn O'Keefe教授と,そのお弟子さんであるMay-Britt & Edvard Moser夫妻に授与されました。本特集号でも藤澤先生には,海馬で場所を記憶するための機構が,経験した出来事が要した時間を何十倍にも圧縮して,神経細胞群の連続発火として記憶するのに役立っていることを解説していただきました。20世紀初頭の物理学は相対性理論の誕生によって,物理学的に時間と空間の関係を論じることを可能にしました。現代の脳科学は,時間と空間の中で起こる出来事を,脳がどのように捉えることができるのかを解明しつつある,と言えます。本特集では,新進気鋭の研究者である著者の先生がたによって,解き明かされつつある心の謎について,力のこもった総説を執筆していただくことができました。ご執筆していただきました先生がたには,年末のお忙しい時期に貴重な時間を割いてくださったことに,深く感謝いたします。
本特集号で述べられた研究の多くは,特定の心の働きには,脳のどの部分が重要な役割を果たしているのかがわかってきたばかりの段階にあります。ただ,研究の端緒は,確実につかみつつあると言えます。読者の皆様には,2015年の新年に際して,研究者の皆様と共に,脳科学のこれからの躍進への夢を共有していただけたら幸いです。
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