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心筋梗塞,重症心不全などの心臓疾患は内科的治療に抵抗性で,心臓移植が唯一の根本的治療となる予後不良の疾患であり,わが国においても年間死亡患者数は約19万人と悪性腫瘍に続く死因の第2位を占めている。一方で,心移植の治療成績は向上しているものの,心移植件数は年間約40例程度でドナー不足は深刻である。その代替療法として,多分化能と自己複製能を持つヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを用いた心臓再生医療が,昨今注目を浴びている。
心臓の果たすポンプ機能の中心的役割を担うのが心筋細胞であるが,心筋細胞は生体内においては増殖することはできない。この“心筋細胞を新たに供給する”というのが心筋再生の目標である。分化誘導による心筋再生はもともと生体に存在する幹細胞や胚性幹細胞(ES細胞)がその研究の中心であったが,2006年にYamanakaらが皮膚由来線維芽細胞に4つの幹細胞特異的転写因子[Oct(octamer-binding transcription factor)3/4,Sox(SRY-related HMG box)2,Klf(kruppel-like factor)4,c-Myc]を導入することによってiPS細胞を作製することに成功した1)。ES細胞と遜色のない能力を持ち,その生命倫理,拒絶反応の問題をクリアしたことで,実臨床での心筋細胞移植に向けて心筋再生の研究は更に加熱した。本稿ではそれらの多能性幹細胞を用いた心筋細胞誘導について述べたのちに,筆者らが開発した新たな心臓再生法である,心臓内に大量に存在する非心臓細胞(線維芽細胞)を直接心筋細胞に転換する,心筋直接リプログラミング法について概説したい。
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