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第5土曜特集 マルチオミクスが解き明かす疾患の本質――統合的アプローチによる新たな知見
疾患別マルチオミクス解析の最新動向
【循環器】
シングルセル遺伝子発現解析で紐解く生体内心筋リプログラミングによる抗線維化
Single-cell RNA sequencing reveals anti-fibrotic mechanisms of cardiac direct reprogramming
前田 高志
1
,
貞廣 威太郎
1
,
家田 真樹
1
Takashi MAEDA
1
,
Taketaro SADAHIRO
1
,
Masaki IEDA
1
1慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)
キーワード:
線維芽細胞
,
心筋再生
,
シングルセル解析
,
抗線維化
Keyword:
線維芽細胞
,
心筋再生
,
シングルセル解析
,
抗線維化
pp.824-828
発行日 2025年5月31日
Published Date 2025/5/31
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293090824
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心不全治療において,現在の薬物療法や心臓移植の限界を克服する新たな手法として,心筋ダイレクトリプログラミングが注目されている.この手法は,iPS細胞などの未分化細胞を介さずに,線維芽細胞から直接心筋細胞を作り出す画期的な方法である.Gata4,Mef2c,Tbx5(GMT)という3因子をリプログラミング因子として同定し,心臓線維芽細胞を心筋細胞へ直接転換することに成功し,その後,Hand2を加えた4因子(MGTH)での効率改善や,遺伝子組換えマウスを用いた薬物投与による慢性心筋梗塞モデルでの有効性も実証した.慢性心筋梗塞モデルでは心臓線維芽細胞の約2%が心筋細胞へと誘導され,心臓の収縮能も回復した.特筆すべき発見として,シングルセル解析により,心筋細胞への転換だけでなく,転換しなかった線維芽細胞においても抗線維化作用が誘導されることを解明し,さらに,近年増加している収縮力の保たれた心不全(HFpEF)モデルにおいても,心機能改善と線維化抑制効果を確認した.HFpEFモデルでは,Gata4単独の発現でも線維化関連遺伝子の発現低下が示された.この手法は細胞移植を必要としない画期的な治療法として期待されており,今後は遺伝性心筋症モデルや大型動物での検証が求められている.

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