シリーズ最新医学講座・Ⅱ iPS細胞・10
iPS細胞から肝細胞を分化誘導する意義
谷口 英樹
1
Hideki TANIGUCHI
1
1横浜市立大学大学院医学研究科臓器再生医学
キーワード:
肝細胞
,
分化誘導
,
薬剤評価
Keyword:
肝細胞
,
分化誘導
,
薬剤評価
pp.1609-1613
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102171
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はじめに
ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞は,受精卵に匹敵する潜在的な多分化能を有しており,原理的にはすべての機能細胞を作り出すことが可能である.そして,これらの幹細胞は培養系において多分化能を維持したまま自己複製させることが可能であり,ヒト肝細胞のような機能細胞を大量に生産するための細胞源(ソース)として大きな期待が寄せられている.
ところが,iPS細胞の分化誘導については,神経系細胞など発生過程の初期段階で作り出される細胞を除くと,特定の成熟した機能細胞への分化誘導は簡単ではない.特に,内胚葉由来細胞のように複数の細胞群の相互作用によって作り出される機能細胞の分化経路を人為的に再現することは現状では困難である.実際,iPS細胞から肝細胞への分化誘導では生体内における肝発生プロセスを再現する必要性があるが,現時点においてそのような手順を踏んで肝細胞の分化誘導に成功したという報告はない.
本稿では,iPS細胞から肝細胞への分化誘導の実現化に向けて,その最も基本的な情報となる肝臓の器官形成プロセスについて述べるとともに,当面の分化誘導の到達目標となる肝幹細胞(hepatic stem cell)の選択的分離法を紹介し,iPS細胞から肝細胞への分化誘導の現状と課題を考えてみる(図1).
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