綜説
ヒトiPS細胞を用いた角膜再生医療の現状と未来
林 竜平
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1大阪大学大学院医学系研究科幹細胞応用医学寄附講座/大阪大学大学院医学系研究科眼科学
キーワード:
iPS細胞
,
角膜
,
再生医療
,
角膜上皮
,
分化誘導
Keyword:
iPS細胞
,
角膜
,
再生医療
,
角膜上皮
,
分化誘導
pp.1579-1586
発行日 2017年12月5日
Published Date 2017/12/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000000507
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iPS 細胞が報告されてから10 年が経過し,この間にさまざまな領域においてiPS 細胞の再生医療への応用研究が着実に進んできた。なかでも,網膜領域においては,2014 年に理化学研究所・高橋政代らの研究チームにより,世界初のiPS 細胞由来網膜色素上皮細胞移植が実施された1)。これはiPS 細胞の報告以前に,同じく多能性幹細胞であるES 細胞を用いた網膜色素上皮細胞の分化誘導技術が早くから確立されてきたことが背景にある。一方で,角膜領域においては,多能性幹細胞から角膜細胞を分化誘導し,単離する技術が長らく確立されてこなかった。我々は近年,ヒトiPS 細胞を用いた角膜や網膜等の原基を含む眼の細胞系譜が層状に規則正しく配行したコロニーであるSEAM(self-formed ectodermal autonomousmulti-zone)の誘導,さらには,そのなかから角膜上皮幹細胞・前駆細胞を単離し,機能的な角膜上皮組織を再生可能であることを世界に先駆けてNature 誌に報告した2)3)。我々の開発したSEAM 法により,ヒトiPS 細胞から純度の高い角膜上皮組織を作製することが可能となり,角膜領域においてもiPS 細胞を用いた再生医療が現実のものになりつつある。本稿では,我々の開発したヒトiPS 細胞を用いた眼組織発生技術の開発ならびに角膜再生医療への応用について述べる。
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