増大特集 細胞シグナル操作法
Ⅰ.分子からみたシグナル操作法
4.その他
γ-セクレターゼ
富田 泰輔
1
,
岩坪 威
2
Tomita Taisuke
1
,
Iwatsubo Takeshi
2
1東京大学大学院薬学系研究科機能病態学教室
2東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野
キーワード:
プロテアーゼ
,
アルツハイマー病
,
膜内配列切断
,
膜貫通領域
Keyword:
プロテアーゼ
,
アルツハイマー病
,
膜内配列切断
,
膜貫通領域
pp.462-463
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200308
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γ-セクレターゼは,アルツハイマー病の原因物質アミロイドβタンパク質(amyloid-β protein;Aβ)を産生するプロテアーゼである。プレセニリン(presenilin;PS)を酵素サブユニットとし,ニカストリン,Aph-1,Pen-2を構成因子とする膜タンパク質複合体がその分子実体である(図)。脂質二重膜内に存在する膜貫通領域を基質とし,まず細胞膜-細胞質境界部分においてエンドペプチダーゼ様活性によって切断した後,残された膜貫通領域をカルボキシ末端側から3ないし4アミノ酸ごとにカルボキシペプチダーゼ様活性によって切断し,最終的に基質のアミノ末端側が細胞外へと放出される1)。
PSをコードするPSEN遺伝子上に家族性アルツハイマー病患者に連鎖する遺伝子変異が多数見いだされており,カルボキシペプチダーゼ様活性の低下により,カルボキシ末端長が長く凝集性の高いAβ42の産生比率を上昇させる。また,γ-セクレターゼ活性を完全に喪失した場合には,発生・分化にかかわるNotchシグナルの抑制が認められる。これは転写因子として機能するNotchの細胞質内領域の産生にエンドペプチダーゼ様活性が必要とされるためである。更にNotch以外にも多くの基質が知られている。そのためアルツハイマー病治療薬開発においては,カルボキシペプチダーゼ様活性を亢進させることで凝集性の低いAβ産生へとシフトさせることが求められている。
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