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核内受容体はステロイドホルモンやレチノイン酸などの脂溶性低分子の刺激により,リガンド依存性にその標的遺伝子の転写を制御する転写因子蛋白質である。ヒトでは48種類が同定されており,基本構造の類似性から,共通の祖先遺伝子から進化を遂げて発展した核内受容体スーパーファミリーに属している。核内受容体によるシグナル伝達では,①リガンド分子が細胞内へ取り込まれ,核内の受容体蛋白質のリガンド結合ドメイン(ligand binding domain;LBD)に結合し,②次いで受容体蛋白質のDNA結合ドメイン(DNA binding domain;DBD)が標的となる遺伝子の転写調節領域における受容体応答配列に結合し,③更に受容体蛋白質の転写活性化ドメイン(AF-1とAF-2)が共役する因子や基本転写因子群と相互作用を起こし,標的遺伝子の転写制御を行う(図)。
核内受容体のうち,ステロイドホルモン受容体サブファミリーはホモ二量体を形成し,多くの受容体はレチノイドX受容体RXR(retinoid X receptor)とヘテロ二量体を形成し,一部は一量体のまま,DNA上の各受容体特異的な応答配列に結合する。ステロイドホルモン受容体のうち,エストロゲン受容体は独自の回文型応答配列に,それ以外の受容体については共通の回文型応答配列に結合して転写活性化を起こす。RXRとヘテロ二量体を形成する受容体サブファミリーには,レチノイン酸受容体(retinoic acid receptor;RAR),甲状腺ホルモン受容体,ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(peroxisome proliferator-activated receptor;PPAR)やビタミンD受容体(vitamin D receptor;VDR),肝X受容体(liver X receptor;LXR),ファルネソイド受容体(farnesoid X receptor;FXR)などがあり,ハーフサイトが同方向に並ぶ直列型応答配列に結合する。内因性リガンドが明らかでない核内受容体はオーファン受容体と呼ばれる。
核内受容体は性分化や発生・再生,代謝生理的作用のみならず,癌や内分泌・代謝疾患などの病態においても重要な病理的作用をもたらしており,標的遺伝子と共に疾患における創薬の標的分子になっている。
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