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本特集の他の稿で紹介されているように,糖鎖は細胞間相互作用,タンパク質品質管理におけるタグ分子,免疫応答におけるシグナル伝達など,様々な生物学的機能発現に深く関与しており,多くの病気発症機構にも密接に関わっていることが明らかとなってきた1)。可溶性タンパク質においては,その血中内安定性にも重要な役割を果たしていることが示されている2-4)。これらの成果はインビトロの実験から導き出されたものが多いが,様々な生物学的および臨床学的な知見を基に,インビボの研究から見出された重要な発見も知られている。例えば,エリスロポエチンは赤血球の産生を促進する糖タンパク質ホルモンとして貧血の治療に用いられているが,天然型の糖鎖が結合していることがインビボでの作用発現には不可欠である3)。そこで次なる興味は,インビトロで解明された糖鎖が関与する個々の相互作用が,実際に生体内(インビボ)でどのようなダイナミックなプロセスを経て機能発現に寄与するのかを明らかにし,さらには診断や臨床への展開を意図して,糖鎖を特定の臓器や癌組織,炎症部位に集積(ターゲティング)させることである。
これを実現する一つの手段として,“生きている動物内で非侵襲的に可視化する”方法が挙げられるが,最近では低分子有機化合物にかかわらず,ペプチドや抗体などの生体高分子の標識体を用いることによって,マウスなどの小動物ではインビボイメージングが比較的容易に実施できるようになってきた5,6)。蛍光イメージングに加えて,常磁性元素や陽電子放出放射性原子を標識基とするMagnetic Resonance(MR)イメージングやPositron Emission Tomography(PET)イメージングも,高感度測定装置の開発・発展と共に盛んに検討されている7,8)。これらの最新インビボイメージング機器を活用し,既にその標的レセプターや相互作用する器官が明らかにされている糖鎖関連物質のイメージングを実施することによって,生体内でのダイナミクスを直接可視化することが可能である。また,機能が未知である糖鎖関連物質を生体内で可視化することにより,逆に個々の糖鎖が持つ生物学的意義を明らかにできる可能性を有する。細胞表層上では様々な糖鎖と種々の生体分子が生体分子社会を形成しているが,細胞間の認識では,それぞれの細胞の生体分子社会同士が互いにパターン認識を行うことにより,高度な選択的認識を可能にしている。これらを細胞上やリポソームあるいは複合体として再構成してイメージングを行うことで,生体分子社会における糖鎖の生物学的意義にもせまることができる。さらにこれらの知見を基盤にして,生体内で炎症部位や癌を特異的に認識する糖鎖,神経系やリンパ節,あるいは脾臓などの臓器に選択的に取り込まれる糖鎖構造を容易に探索することができよう。
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