Japanese
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特集 糖鎖のかかわる病気:発症機構,診断,治療に向けて
糖鎖合成異常症の診断法
Diagnosis of congenital disorders of glycosylation
和田 芳直
1
Yoshinao Wada
1
1大阪府立母子保健総合医療センター研究所
pp.167-172
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100980
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1 先天性糖鎖合成異常症CDGの疾患概念
糖鎖の合成に関わる疾患を総称して先天性糖鎖合成異常症Congenital Disorders of Glycosylation(CDG)と呼ぶ。その歴史は糖鎖や糖脂質の分解に関する疾患よりずっと新しく,1984年に原因不明の精神運動発達遅滞患者の血清トランスフェリンに健常人のそれよりも高い等電点をもつアイソフォームの存在が報告されたのが実質的な始まりである1)。電気泳動におけるこの変化は,トランスフェリンのN型糖鎖の非還元末端シアル酸(Nアセチルノイラミン酸)数の減少に由来し,また,他の糖タンパク質にも見られ,さらに同様の患者が見つかるに至って,この疾患群は糖タンパク質糖鎖欠損症候群Carbohydrate-Deficient Glycoprotein(CDG)syndromeと名付けられた2)。1992年,シアル酸数の変化をもたらす糖鎖構造がN結合型糖鎖単位の欠失であることが筆者らによって解明されたことで,疾患の原因が糖鎖の合成障害,しかも合成初期過程の異常であることが確実となった3)。そのことを契機に糖鎖合成初期過程に関わる酵素群の活性測定が行われ,数名の患者の培養線維芽細胞にホスホマンノムターゼ2(phosphomannomutase-2)の活性低下が見つかり4),遺伝子変異が同定された5)。1999年に“CDG”は現在の“Congenital Disorders of Glycosylation”の略となった6)。
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