Japanese
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特集 脳と糖脂質
ペルオキシソーム病における脳脂質異常
Abnormal lipid metabolism in the brain of peroxisomal disorders
齋藤 真木子
1
,
水口 雅
1
Makiko Saitoh
1
,
Masashi Mizuguchi
1
1東京大学大学院医学系研究科発達医科学教室
pp.202-209
発行日 2009年6月15日
Published Date 2009/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100845
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ペルオキシソーム(peroxisome)は,真核生物に広く存在する直径0.1~1μmの細胞内小器官であり,極長鎖脂肪酸のβ酸化,プラスマロゲンとよばれるエーテルリン脂質の合成や胆汁酸の生合成など脂質代謝において多岐にわたる重要な機能を担っている1)。ペルオキシソームの形成や代謝系に障害をもつ遺伝性疾患を総称してペルオキシソーム病とよぶ。ペルオキシソーム病のすべてを合わせた発症頻度は1:20,000を超える程度とされている2)。ペルオキシソーム病はZellweger症候群(Zellweger syndrome, ZS)のようにペルオキシソームの形成異常による疾患と単一酵素欠損による疾患に分類される1-3)。これらの疾患では筋緊張低下,けいれん,発達遅滞などの中枢神経系の症状を示すことが多い。神経病理学的にはニューロンの遊走障害や分化の異常,分化後の変性,および白質の髄鞘化不全や脱髄が特徴である。脳は他の組織と比べ多彩で豊富な脂質を含み,その組成や量の変化は細胞の機能に大きな影響を及ぼす。ZSは脂質代謝異常症によって奇形や器官形成障害が起こることを示す疾患であり,それゆえ発生期脳の皮質形成における脂質の重要性を改めて提示している。ペルオキシソーム機能障害による脂質代謝異常と中枢神経症状との関連についてこれまでさまざまな研究が進められているが,未だに全貌は解明されていない。本稿ではペルオキシソーム病における脳の脂質異常および,病態の解明に関わる最近の研究動向と知見を中心に述べる。
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