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脂質ラフトはスフィンゴ糖脂質とコレステロールに富む細胞膜のミクロドメインである。GPIアンカー型タンパク質,srcファミリーチロシンキナーゼ,三量体Gタンパク質など様々なシグナル伝達分子を結合させることにより膜を介するシグナル伝達の中継点として働き,多くの生命現象を調節していると考えられている1,2)。ショ糖密度勾配遠心分離法によって,低密度でTriton X-100不溶性でスフィンゴ糖脂質,スフィンゴミエリン,コレステロールに富む膜画分が細胞から分離することができ,この膜画分が脂質ラフト画分と考えられてきた。しかし,生きた細胞で脂質ラフトを解析する方法は一分子追跡法や蛍光共鳴エネルギー移動法など限られ,本誌2008年10月号「現代医学・生物学の仮説学説2008」の脂質ラフトの項で詳しく述べられているが,脂質ラフトの実体について一致した見解が得られていない3)。形質膜がフラスコ型に窪みマーカータンパク質カベオリンを持っているカベオラは,ラフトを同じような方法で分離することができ,類似した構成成分を含んでいることから脂質ラフトの一部であると考えられている。
三量体Gタンパク質はα,β,γのサブユニットから成り,細胞表面のGタンパク質共役受容体から細胞内の効果器にシグナルを伝える分子スイッチとして働いている。刺激のない状態においては,αサブユニットはGDPと結合しており,三量体Gタンパク質は活性を持たない。活性化した受容体から刺激を受けると,αサブユニットに結合しているGDPが離れてそこにGTPが結合する。この交換によって三量体はαサブユニットとβγ複合体の二つの成分に解離する。Gタンパク質共役受容体は多様な三量体Gタンパク質と共役することができるが,多くのGタンパク質共役受容体は特定の三量体Gタンパク質と優先的に共役する。この相互作用はまず第一にGタンパク質共役受容体と三量体Gタンパク質同士が本来持っている親和性によっている。しかし,あるGタンパク質共役受容体は一つ以上の三量体Gタンパク質と共役することができる。最近,Gタンパク質共役受容体と三量体Gタンパク質との共役パターンの重要な決定因子は脂質ラフトであることがわかってきた4)。
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