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[1] ラフト領域あるいはラフト画分
細胞膜中のスフィンゴ脂質とコレステロールに富む微小領域で,これらに親和性を持つタンパク質(たとえばGPI-アンカー型タンパク質)が局在する領域がラフトとして認められてきた1-4)。ラフト領域の解析における現在の課題の一つは,脂質二重層の外葉では確かにこれらの脂質とタンパク質の局在が観察されているが,内葉における脂質の種類,局在や外葉-内葉間の相互作用などについてはほとんど知見がないという点である。生化学的には低温下での非イオン性界面活性剤処理では可溶化されず,密度勾配遠心により低比重画分に回収される膜構造がラフトに対応すると考えられており,この画分に特異的に回収される細胞内タンパク質が存在することから,内葉においてもなんらかの脂質の特異的集積が存在する可能性が高い。もう一つの課題は,ラフトの生化学的解析においては上記の手法により様々な細胞領域由来のラフト領域が一つの画分として回収されるため,個々の構成因子の相互作用分子の同定には別の手法が必要であるという点である。高度に発達した細胞間相互作用と細胞極性,神経分泌に代表されるメンブレンサイクリングシステムが特徴である脳組織に存在するラフト領域においてはこの点が特に重要となる。
いわゆるラフト画分に回収される脂質やタンパク質は用いる界面活性剤により変動するが,この項では界面活性剤としてTriton X-100を用いた生化学的処理によって得られたラット脳由来のラフト画分の構成因子について述べる。一方,膜画分を超音波処理やアルカリ処理により細分化し,その後の密度勾配遠心により得られた低比重画分をラフトと呼ぶこともあるので注意が必要である4)。少なくとも神経系においては,この2種の画分間では構成因子に大きな違いが存在する5)。
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