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三量体Gタンパク質は神経伝達物質やホルモン,光など多くの細胞外情報を細胞内に伝達する役割を担う。α(Gα),β(Gβ),γ(Gγ)の三つのサブユニットから成るヘテロ三量体を形成し,不活性型のGαにGDPが結合している。細胞膜においてGタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)と共役し,GPCRにホルモンなどのリガンドが結合するとGPCRの構造変化が起こり,共役するGαからGDPが解離し,そのかわりに細胞内に豊富に存在するGTPがGαに結合する。GTP結合GαはGβγと離れ,遊離したGαおよびGβγは下流のエフェクターへシグナルを伝達する。GTPが結合したGαは,Gα自身の持つGTPase活性によりGTPをGDPとリン酸へ分解する。GDP結合GαはGβγと再結合して元の三量体へと戻る。このように三量体Gタンパク質は可逆的な分子スイッチとして働く。
GαはGαs,Gαi,Gαq,Gα12/13の四つに大別され,それぞれ下流因子が異なる(図)。Gタンパク質がそれぞれの下流因子を活性化することによって,細胞遊走や神経伝達物質の放出,遺伝子発現など,様々な細胞応答に関与する。
Gタンパク質の活性はGDP-GTP交換反応を促進するGEF(guanine nucleotide exchange factor)と,GTPase活性を高めるGAP(GTPase activating factor)により制御される。GPCRがGEFとして働くのに対して,RGS(regulator of G protein signaling)が三量体Gタンパク質のGAPとして働く。近年,Ric-8と呼ばれる非受容体型のGEFの存在も明らかとなった。また,Ric-8はGαのユビキチン化を抑制する1)。Gタンパク質シグナルの制御の一端として,ユビキチン化を介したプロテアソーム系によるGタンパク質の量的な調節機構が判明した。
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