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1 糖脂質の構造と分布
1930年代にKlenkによってGM2の異常蓄積を示す疾患が報告され,Tay-Sachs病の存在が明らかになって以来,糖脂質,とくにシアル酸を有するスフィンゴ糖脂質(ガングリオシド)が,神経系組織において主要な脂質構成成分であることが判明した。また,その糖鎖部分の多様性が順次明らかにされて,神経系組織の発生,分化,機能において重要な役割を果たしていることが広く認められてきた1)。糖脂質は,その脂質部分の基本構造の差異に基づいて,スフィンゴ糖脂質とグリセロ糖脂質に大別される。すなわち,前者はセリンとパルミトイルCoAから合成されるスフィンゴシン(直接にはスフィンガニン)(一般名:長鎖塩基)と脂肪酸が酸アミド結合したセラミドに糖がグリコシド結合して合成され,後者は1-O-アルキル-2-O-アシル-3-β-ガラクトシルグリセロールに代表されるように,グリセロール骨格のC3に糖が結合して合成される。分子種の多様性や高等動物における発現分布の広さにおいて,スフィンゴ糖脂質の方がよく研究されてきた。
糖脂質の基本構造として,スフィンゴ糖脂質を中心に要約すると,セラミド部分の構造は比較的少数に限られており,主に糖鎖の伸長度や基本骨格および末端の糖鎖修飾の違いによる多様性に多くの研究者が注目してきた。セラミドに最初に結合する糖としては,グルコースとガラクトースとがあり,大部分の糖脂質は,グルコースが結合したglucosylceramideにガラクトースが結合してできるlactosylceramideを起点として合成される。ガラクトースに結合する糖の種類によって,ガングリオ系列,ラクト/ネオラクト系列,グロボ系列,イソグロボ系列,アシアロ系列などのグループに分岐し,独自の糖鎖伸長と分岐構造が形成される。脊椎動物以外では,glucosylceramideにβ4マンノースが結合して合成されるアルスロ系列やモル系列の糖脂質も存在する(図1)。
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