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神経・筋細胞における収縮や伝達物質放出の生理的過程においては,細胞表層膜の脱分極が細胞質Ca2+濃度上昇にシグナル変換される。その興奮性細胞における情報伝達では,電位依存性Ca2+チャネルの開口による細胞外からのCa2+の流入,引き続き生じるリアノジン受容体の開口による小胞体からのCa2+放出が普遍的に観察される。この機構はCa2+によるCa2+放出(Ca2+-induced Ca2+release;CICR)と呼ばれている。また,Ca2+結合タンパク質の豊富な細胞内にて効率的にCICRが成立するためには,両チャネルが局在する細胞表層膜と小胞体膜が互いに接近した構造が必要とされると考えられる(図1)。事実,神経細胞におけるsubsurface cisternae,横紋筋細胞におけるtriadやdiad構造,未成熟な横紋筋と平滑筋細胞におけるperipheral couplingと命名された近接膜構造が電子顕微鏡により古くから観察されており,CICR機構の反応の場であると考えられている。
われわれのグループでは,この近接膜構造を形成する分子の同定を目指した検索で,骨格筋細胞のtriad構造中に分布するジャンクトフィリン(Junctophilin;JP)を単離した1)。実際,JP cDNAの機能発現実験では,小胞体膜と細胞表層膜の近接膜構造の形成が確認された。JPには4種のサブタイプ(JP-1, 2, 3, 4)が同定されており,これらはカルボキシ末端の小胞体膜貫通領域と,アミノ末端側に位置する細胞表層膜との特異結合に寄与する14アミノ酸残基からなる繰り返し配列(MO RNモチーフ)を共通な構造として有している。JPサブタイプはCICR機構の存在が確認されている興奮性細胞系に分布し,JP-1は骨格筋特異的で,JP-2は骨格筋,心筋,平滑筋の筋細胞全般に発現しており,JP-3とJP-4は神経細胞に存在していることが示されている。
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