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はじめに
最近,日常診療において膵囊胞性疾患を診断する機会が増加している.この場合,良悪性の診断や摘出術の適応を正確に判断することが求められるが,腫瘍と膵管の交通がみられない症例の場合,組織・細胞の採取は比較的困難である.海外からは超音波内視鏡下穿刺吸引細胞組織診(endoscopic ultrasonography-fine-needle aspiration biopsy;EUS-FNA)を施行し,囊胞液中血清癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen;CEA)などの測定が鑑別診断に有用との報告がみられる1,2).本邦では穿刺した際の腫瘍細胞の播種,腹膜炎,出血などの偶発症が懸念され敬遠されてきた経緯があり,現在でも画像診断が大きな比重を占める.
1978年にCompagnoら3)は,それまで膵囊胞性腫瘍とされていたものを漿液性囊胞腫瘍と粘液性囊胞腫瘍に明確に分類して報告した.以降様々な名称の変更を経て,今日前者はSCN(serous cystic neoplasm),後者はMCN(mucinous cystic neoplasm)と呼ばれており,膵癌取扱い規約 第6版4),AFIP,WHOの組織型分類では膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN)やその他の膵腫瘍と明確に区別されている5,6).
SCN,およびMCNに関する話題は,すでに各種の消化器関連学会,研究会でも取り上げられ,特に胆膵疾患の診療に携わる医師の関心は高い.2000年から毎年7月下旬に開催され,本年第11回を迎える『臨床消化器病研究会』の『肝胆膵の部』でも,過去MCNが第1回と第5回,SCNが第8回の『膵』セッションのテーマとして取り上げられ,画像と病理の比較を中心とした討論が行われた.
筆者は第8回の『膵』セッションで司会を担当させていただいたが討論は尽きず,関心の高さと未解決の問題の多さを肌で感じたことを記憶している.
またMCNに関しては,2004年に仙台市で共同開催された国際膵臓学会(IAP),および日本膵臓学会(JPS)での討論をもとに2006年,国際ガイドラインが発刊され,その取り扱いに一定の指針が示された7).その後JPSでは2007年に臨時委員会として,囊胞性膵腫瘍委員会が発足,MCNおよびSCNについて国内の成績を集計し,現在その結果を英文誌に投稿中である(表1).
本稿では,現在までに報告されているSCNとMCNの特徴について概説し,鑑別診断,問題点,最近の話題についても触れ本特集の序説としたい.
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