特集 攻めの安全処方術—引き算処方+多面的アプローチ
【総論編】
❶「攻めるsafe prescribing」とは?
家 研也
1
1聖マリアンナ医科大学/川崎市立多摩病院総合診療内科
キーワード:
ポリファーマシー
,
safe prescribing
,
安全処方術
Keyword:
ポリファーマシー
,
safe prescribing
,
安全処方術
pp.1118-1119
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350101118
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safe prescribingとは?
safe prescribing(安全処方術)は、多剤併用(ポリファーマシー)による薬物有害事象やアドヒアランス不良を回避するための、医療安全の文脈から出発した概念である。近年では、「deprescribing(処方の引き算)」という言葉も浸透しつつあり、必要最小限の処方を意識した対応はすでに広まりつつある。しかし、safe prescribingは単なる“減薬”の技術ではない。患者が抱える症状に真摯に向き合い、「薬を出す/出さない」の二項対立ではなく、「患者のために最善の支援とは何か」を軸に、病態生理学的知見、薬理学的知見、生活背景、価値観、医療者との関係性といった多層の情報を統合して処方を決定する、高度で繊細な医療行為を意味する。ガイドラインに準拠しつつも、個別性に配慮した判断が不可欠であり、日々の診療においてsafe prescribingを実践していくために、ジェネラリストとしての力量が問われる。
国際的なsafe prescribingに関するガイドラインとして、例えばWHO(世界保健機関)の『Medication Without Harm』1)はsafe prescribingの推進に向けた基本的な指針を示したイニシアティブであり、複数のプロダクトが公開されている。また、2025年7月には日本老年医学会による『高齢者のための安全な薬物療法ガイドライン2025』2)が出版され、これも高齢者に特化した安全処方の基準を定める重要な資料となるだろう。
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