特集 心原性ショック診療:エビデンスに基づく最適化への挑戦
【コラム】急性期後の血行再建—ischemic cardiomyopathyに対するPCIとCABGの現在地
鈴木 隆宏
1
Takahiro SUZUKI
1
1聖路加国際病院 循環器内科
キーワード:
重症虚血性心筋症
,
最適薬物療法
,
経皮的冠動脈インターベンション
,
冠動脈バイパス術
Keyword:
重症虚血性心筋症
,
最適薬物療法
,
経皮的冠動脈インターベンション
,
冠動脈バイパス術
pp.346-350
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188348330170030346
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はじめに
心筋梗塞や心原性ショックの急性期を生き延びた患者の多くは,左室駆出率left ventricular ejection fraction(LVEF)が著しく低下した重症虚血性心筋症へと移行する。虚血性心筋症ischemic cardiomyopathy(ICM)は,冠動脈疾患による心筋障害から生じる心不全であり,心不全の約2/3を占める重篤な病態である1)。
現在の欧米のガイドライン2,3)では,LVEF低下と多枝病変を有する患者に対し,最適薬物療法optimal medical therapy(OMT)に加えて侵襲的アプローチを推奨している。急性心筋梗塞などの急性期治療を乗り越えたICM患者に対して,重要な臨床的判断は血行再建術をどのように選択するかであり,経皮的冠動脈インターベンションpercutaneous coronary intervention(PCI),冠動脈バイパス術coronany artery bypass grafting(CABG)などの侵襲的アプローチが予後改善に寄与するか否かについては長年議論されてきた。この治療選択は複雑であり,生存率や予後の改善可能性と,手技に伴うリスクのバランスを慎重に考慮する必要がある。近年,無作為化比較試験(RCT)やメタ解析の結果が蓄積され,PCIとCABGの長期予後や生活の質(QOL)への影響が明らかになりつつある。
本コラムでは,これら最新のエビデンスをふまえ,急性期を乗り越えたICM慢性期におけるPCIとCABGの役割について概説する。

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