特集 精神療法が知りたい
精神療法の世界のダイナミズムとおもしろさ
④認知療法―歪んだ認知を修正して健康な認知を育てる
大野 裕
1
1慶鷹義塾大学保健管理センター
pp.38-43
発行日 2003年5月15日
Published Date 2003/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900707
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認知療法は看護アプローチに近い
認知療法(Cognitive Therapy)は認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy)とも呼ばれ,私たちの気持ちが認知,つまり考え方やものの見方の影響を強く受けることに注目して,認知に働きかけて情緒状態を変化させることを目的とした短期の精神療法である。認知療法は,もともとはうつ病に対する精神療法として開発されたが,その後,パニック障害や強迫性障害などの神経症性障害,リエゾン・コンサルテーション精神医学領域,さらには精神病性障害などに対する治療効果が実証され,その適用範囲は広がりを見せている。また,ストレス状況における情緒状態のコントロールや,行動への働きかけの際にも有用なアプローチであることが示されている。もちろん,看護領域でも重要なアプローチである★1。
筆者が米国に留学していた1980年代半ばに,精神科病棟で認知療法が積極的に活用されていたことを思い用す。当時勤務していた病棟は,いわゆるパーソナリティ障害の患者を対象とした治療病棟で,それまでは精神分析的なアプロ一チが行なわれていた。
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