増刊号 認知症と作業療法
第1章 認知症とは
8 —認知症の診断と治療④—血管性認知症の診断と治療
玉井 顯
1,2
Akira Tamai
1,2
1敦賀温泉病院 認知症疾患医療センター
2介護老人保健施設ゆなみ
pp.594-598
発行日 2015年6月20日
Published Date 2015/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200260
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血管性認知症(VaD)は,脳の血管障害が原因となって認知症をきたすものをいう.だが,その原因はさまざまであり,障害された部位や範囲も個々の症例により異なり,経過も決して均一ではない.診断を確定するためには,脳血管による障害部位と認知症の症状との関係を明確にすることが必要であり,より高度な神経心理学的・高次脳的知識が要求される.脳梗塞や脳出血(図1,2),くも膜下出血等が原因となるが,アルツハイマー病の合併も多く,血管性認知症の診断を複雑化している.
血管性認知症の頻度については,CTが日本に登場し画像診断が普及したころ〔1975年(昭和50年)〕からしばらくは,認知症が認められ画像所見で血管障害が見られれば,血管性認知症と診断された傾向があり,そのころの血管性認知症の頻度はアルツハイマー病よりも高く見積もられていた.しかし,近年では血管障害があろうとも,障害部位と認知症の関連がない場合には安易に血管性認知症と診断しなくなり,現在アルツハイマー病,レビー小体型認知症に次いで3番目に多い認知症となっている.血管障害部位と認知症の関連を厳密にすればするほど,血管性認知症の診断率は下がる.混合性認知症という診断はなるべく避け,「脳血管障害を伴うアルツハイマー病」等と診断することが推奨されている.それでも10%前後の頻度である.性別としては男性に多くみられる.
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