特集 精神科治療、この10年で覆った常識とは
“不要な神話”を手放した人たち
—「社会への適応が回復」という見方を覆した—“世に棲む患者”の可能性と潜勢力をもったリカバリー
松本 卓也
1
1京都大学大学院人間環境学研究科
pp.46-49
発行日 2023年1月15日
Published Date 2023/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201087
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病気とは
病気は、たいてい「ふつう」からの逸脱(ずれ)のことだとされている。たとえば、高血圧症とは血圧が「ふつう」よりずっと高い状態のことだ。風邪を引くと、くしゃみや咳が続いたり、高熱が出たりといった「ふつう」ではない症状が起こる。
それと同じように精神疾患も、「ふつう」からの逸脱だと考えられてきた。つまり、町中でみかける「たいてい」の人は、意識も清明で、「ふつう」にコミュニケーションが取れたり、「ふつう」に職場や学校に行ったり、「ふつう」に家庭で暮らしているけれども、精神疾患にかかると、意識障害、幻覚、妄想、うつ、意欲低下……といった「ふつうではない」症状が生じる、と考えられたのである。
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