書論
ASDはSF的、ADHDは落語的。
高野 秀行
pp.462-467
発行日 2021年9月15日
Published Date 2021/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200926
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
文字通り、貪るように読んでしまった。こんな不思議な読書は初めてである。ものすごくわかるところと全然わからないところが斑に入り交じっている。生まれ育った1970年代の東京八王子の田舎とM78星雲みたいな異世界が混在しているような感じとでも言おうか。共感と刺激。安心と冒険。ノスタルジーとエキゾチスム。交感神経と副交感神経。この相反する2つの要素は人間にとって必須だから、両方がほどよく混ざっている本書は私にとって一種、理想の世界であった。
著者の横道誠さんはASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠陥・多動症)を合わせ持つ強豪である。そして、2年ほど前に気づいたのだが、私は非常にADHDが色濃い。というより、診断こそ受けていないが間違いなくADHDだろう。本書に掲載されているアメリカ精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』(DSM-5)を見てもほとんどが当てはまり、横道さん同様、暗澹たる気持ちになる。
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.