特集 「発達障害」は当事者に聞け! 新時代の「知」を切り開く人たち
—精神医学からみて—ASD/ADHDを分ける(厳密に診断する)意味はあるのか?
兼本 浩祐
1
1元愛知医科大学精神神経科・中部PNESリサーチセンター
pp.28-31
発行日 2024年1月15日
Published Date 2024/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201229
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実在論と唯名論
読者の皆さんは、実在論と唯名論という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。中世の普遍論争という哲学談義で、500年以上も歴史のある議論です。病気の診断名には、実はこの実在論的な診断と唯名論的な診断が混在しているのだというと驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
実在論とは、ある対象にはその対象の本質があり、それがあればその対象はそれになり、それが無ければその対象はそれで無いといったあり方のことをいいます。たとえばハンセン病は、実在論的な診断名の代表格の1つです。アルマウェル・ハンセンが1873年に、らい結節の中に細菌に似た桿状のものを顕微鏡で発見し、らい菌に感染して出現する症状がハンセン病であることがその後、確定されます。
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