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書評─『ナラティブホームの物語』─限りある“いのち”のものがたりを語り継ぐ
町 亞聖
pp.461
発行日 2015年5月25日
Published Date 2015/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200226
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「死」を正面から見据えた生の医療が“看取りの医療”。治療ではなく人生の最後の時を悔いなく生き抜くための医療があってもいい。終末期で大切なのは一人の人間が歩んできた人生,つまりものがたられる「いのち」に向き合うこと。たとえ最先端の医療で「命」を救っても患者を救えないときがあると知った一人の医師が辿り着いた医療の形です。
かつて末期がんの治療は「敗北の医療」と言われていましたが,私はそうではないことを確信していました。なぜならまだ緩和ケアという概念も普及していない約20年前に私たち家族は医師と訪問看護師の支えを受けて末期がんの母を自宅で看取ることができたからです。ですが母亡き後,がん医療の取材を始めた私は先進国だと思っていた日本の医療の未熟さを目の当たりにすることになりました。当時「もう治療法がない」と医療から見放された患者さんがどれだけいたか……。
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