連載 「自殺者の少ない地域」のコミュニケーション力を考察する・3【最終回】
“気持ちよく全敗させてくれる地域”は確かに存在する
森川 すいめい
1
1世界の医療団東京プロジェクト
pp.61-65
発行日 2015年1月15日
Published Date 2015/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200025
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
自殺者が少なくても、生きやすい場所かどうかはわからない
私は青森県のある場所で、自殺者の少ない地域について講義をしたことがあった。自殺で亡くなる人が比較的少ない村から来ていた若い人が、こんなふうに言っていた。「私は生まれ育ったあの村が嫌いだ。ああいう村に居続けられるような人が、自殺しないでいられるのだと思う」と。確かにその村のホームページを見ると、一生懸命に、自殺するほど追い詰めるようなことにはならないように頑張っている雰囲気が見えた。村長のメッセージには、「村を好きだと言えるような村にしたい」とあった。行ったことのない地域なのでこれ以上は考察できないが、彼女の話を聞いて思ったのは、統計上で自殺者が少ないことと、その村が住みやすいかは同義ではないということだ。
別の県の村から来た若い人は、こんなふうに言っていた。「私の生まれた地域では、身近なところでたくさんの人が自殺した。そういうのが当たり前だと子どもの頃は思っていた」と。
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.