連載
萱間真美の「この2か月」+「働きママン」・7
萱間 真美
1
1聖路加看護大学精神看護学
pp.94-99
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100831
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
30代の危機!?
「クローズアップ現代」というNHKの番組で、昨年度のベスト10に入った『助けてと言えない――いま30代に何が』が本になった。30代のスタッフと一緒に働いているものとして、とても気になるタイトルで思わず買ってしまった。翌日その本を大学にもっていき、30代のスタッフに見せた。「そうなんですよ。助けてって言えないんです」と、直ちに、しかも悲しそうに反応するのを見て、焦った。皆さんにも30代の同僚や部下、あるいはお子さん、お孫さんがいらっしゃることだろう。
この本は、北九州で餓死した39歳の男性が、餓死するまでに困窮していたことを誰にも相談しないまま、「孤独死」に至った事件を取材の発端としている。遺体の傍らに置かれた便箋には「たすけて」と一言だけ書かれていたという。バブル期に大学生となり、就職する頃には景気が悪化、就職氷河期にかかった世代である。就職しても、経営が厳しい企業の過酷な労働条件で身体を壊し、非正規雇用のなかを渡り歩くしかなかった。借金やその取り立てのために職を失い、生活保護課を訪れた男性は、その事実を相談することができず、生活保護も申請しないままだった。兄弟や親戚、友人にも生活の苦しさを直接訴えることもしないまま、母の住んでいた家の母の仏壇の前で餓死に至った。
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.