連載
萱間真美の「この2か月」+「働きママン」・4
萱間 真美
1
1聖路加看護大学精神看護学
pp.104-109
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100735
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一本の電話
東京では桜の花が咲き始めた寒い雨の日、栃木県にある大学にFD(ファカルティ・ディベロップメント=大学教員の研修会です)の講義に伺った。広大な敷地にそびえる大きな大学病院。立派な松の木が構内に何本もある。大学教員には、年に数回の研修を受けることが義務づけられているので、私も自分の大学では研修のための講義を受けるが、教師の集団に講義をするというのはいやなものである。「あの話し方はどうかな」とか、「もうちょっとこうすればいいのに」とか思われていることを想像しながらの講義はなかなか大変だ。
この大学には、他の仕事で一緒に働いたことのある先輩や友人がたくさんいて、前の方に座ってたくさん質問をしてくれ、帰りには大きなお菓子の箱を持たせてくれ、なんだか温かい気持ちになった。ある友人が、「今日あなたがここに来るって言ったら、連絡先を知らないので至急連絡をほしいという伝言をもらった」とメモを持ってきてくれた。メモの主は、栃木から遠く離れたところにいる人で、「こんな偶然もあるんだねえと言っていた」とのことだった。このときにかけた一本の電話から、その後の想像を絶するあわただしさが始まるとは、思ってもみなかった。
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