連載 戦前、精神障害者の治療を担っていた民間施設とは・4
岩瀧寺における精神病治療
三浦 藍
1,2
1神戸市看護大学健康生活看護学領域(精神看護学)
2立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程
pp.97-103
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100734
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はじめに
「精神病院は怖いところだと思ってました」看護学生がよく言う言葉です。彼らは実習を通して、怖い・暗い・汚い等といったそれまでの精神科病院のイメージから脱却し、新たな意識をもって精神科病院や精神病者と向き合うようになります。しかし、そもそも「精神病院は怖いところ」だと認識させるきっかけは何なのでしょうか。
それは精神病者という自分とは異質な(と思い込んでいる)者に対する無知であり、精神科病院が不可視化されていることではないかと思いますが、それ以外にもさまざまな理由があると思います。その理由を考えていくうちに、そもそも「病院がない時は精神病者はどのように生活していたの?」という単純な疑問をもつようになりました。そこで、精神科病院ができる前の精神病者の在りようを知ろうと思い、フィールドワークを始めたのです。
兵庫県丹波市に香良病院という単科の精神科病院があります。2009年に個室を揃えた新しい病棟も完成し、自然豊かな環境でゆっくりと落ち着いて療養できるようになっています。この病院の隣には岩瀧寺(現在は岩龍寺と表記)というお寺があります。調査を進めていくうちに、岩瀧寺で大正期から昭和初期にかけて、瀧治療を中心とする精神病治療が行われていたこと、そしてその瀧治療が変容しながら近代西洋精神医療に取り込まれていったことが明らかになりました。
そこで今回は、岩瀧寺での精神病治療の歴史―そのはじまりから病院設立まで―をご紹介したいと思います。
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