連載 ケアフルな一冊『網野善彦を継ぐ』
アカデミズムとは……?
坂田 三允
1
1群馬県立精神医療センター
pp.120
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100350
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
歴史学者網野善彦氏が亡くなって半年以上が経過した。私が,網野氏の名前を知ったのは,隆慶一郎の『吉原御免状』だったと思う。それまで私の中で遊郭吉原は,掟にがんじがらめにされた女性にとっての苦しみの場所だという認識しかなかった。しかし,この物語からそうではない一面もあったらしいということがおぼろげに伝わってきた。
もちろん吉原御免状は「お話」であり,史実ではないのだが,荒唐無稽の話とは思えなかった。そして参考文献の中に網野氏の『無縁・公界・楽』を見つけ,公界を苦界と思い込み,苦界=吉原と単純に考えた。吉原のことが書いてあるに違いないと思って,読んでみようという気になったのだった。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.