連載 ケアフルな一冊『明治の精神異説―神経病・神経衰弱・神がかり』
脳病・神経病・神経衰弱そして……―私たちはどこへいくのだろう
坂田 三允
1
1群馬県立精神医療センター
pp.106
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100193
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本書は一言でいえば,帯封にあるように「病む精神に,明治の暗部を読む」本であり,「知識人の神経病・神経衰弱・脳病,民衆の神がかり・憑依妄想――明治精神の陰の系譜を掘り起こし,日本近代を捉えた負の構図を明るみに出す」本である。
まずは,おもしろい。トリビア(?)が満載されている。たとえば脳病文化と脳病の意味という項には,明治の日本では「脳がわるい」とか「脳病」という表現が手軽に使われていたことが述べられている。「長州閥の親分木戸孝允は明治六年の政府大分裂のさなかに,しつこい頭痛にたまりかねて『脳病』だと日記に書きこむわ,一八歳の透谷北村門太郎は恋する石坂美那に『脳病』だと打ち明けるわ,一葉樋口奈津は,離別しても思い切れない半井桃水に悩ましげに書き送るわ,これはもう脳病文化とでも呼びたいような文化現象である」。(へー!!)
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