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1.はじめに
僕は,27歳である。べてる流にいわせると自己病名は「爆発型エンターティナー症候群」である。
小学校6年生のときに突然チックのような症状にはじまり,さまざまなパフォーマンスを伴う「爆発」で入退院を繰り返した10年間を振り返ると,本当によく生きていたものだと思う。いまは,フリースクールに通い高校の単位取得をめざし,空いた時間に引越しのアルバイトをこなしながら空手の道場にも通っている。
アルバイトは大変だ。「精神科に入院していました」とも言えない。正直緊張する。なかなか覚えが悪くて「頭おかしいんじゃないのか」とか「お前,ちょっとズレてるんじゃないか」と言われたときには,気持ちが沈んでしまい仕事が手につかなくなる。自分なりに症状に対する対処法や自分の助け方を意識し,何とかバランスを取りながら毎日を過ごしている。昔だったら,こんなプレッシャーがきたら「注射打ってほしい!」と病院に駆け込んでいた。いまは,多くの人たちの支えを実感できる。そのおかげで,いまこうしていられると思う。まだまだその意味をわかっていない部分もあると思うが,理屈ぬきに自分の身体がいま,仲間や人とつながっているのを感じている。正直,自分なりに「成長したなぁ」と思うこともある。
そんな自分の27年を振り返ったとき,「爆発型エンターティナー症候群」という仲間と一緒につけた自己病名が意味するように,自分はつらいとき,苦しいとき,いつも自分の人生を演出してきた“エンターティナー”だということに気づかされる。苦しいときに,いつも自分が自分以外の人格に変身し,深夜徘徊をし,ときには自分の身体を掻き毟った。壁も叩き,わめき散した。
いま,べてるでは,仲間が次々に自己研究をはじめている。それを横目で見ながら,今度はぜひ自分が挑戦したいと思い,研究と講演への参加をはじめた。
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