連載 職場のメンタルヘルス・6
職場の人間関係を演出するコミュニケーション
武藤 清栄
1
,
村上 章子
1
1東京メンタルヘルス・アカデミー
pp.778-782
発行日 2007年9月1日
Published Date 2007/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101019
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メッセージ―内容に関するものと関係に関するもの
職場の人間関係の良し悪しを決めるのは,コミュニケーションの品質である.大きく分けるとコミュニケーションには「言語的なもの」と「非言語的なもの」があり,前者はメッセージの「内容に関するもの」,後者はそのメッセージの演出にかかわり,「関係に関するもの」と言われる.言葉や文字,メール等は内容に関するものであり,声,文章の長短,伝え方,句読点の打ち方,強調,表情や態度などは関係に関するものである.つまり,内容に関するものは言語的,関係に関するものは非言語的なコミュニケーションに属する.そしてすべてのメッセージ(記号)は,常に関係に関するものが,内容に関するものを規定するというルールがある.
例えば,太郎と花子は恋人同士である.それも非常にうまくいっている恋人同士である.ある時太郎がヘマをしたら,花子が「あなたって本当にバカね」と言った.しかし,太郎にとってその言葉は,「愛のささやき」のように聞こえる.そして「俺って本当にバカだったよなぁ」と自分の非を認めた.一方,太郎と桃子は仕事のライバルである.たまたま太郎が仕事上のミスをした時に,横にいた桃子がたまらず言葉を漏らす.「あなたって本当にバカね」それを聞いた太郎はムッとし心の中で「くそっ.いつかこいつをバカにしてやる」とつぶやいた.内容的なメッセージとしては両者とも「あなたって本当にバカね」であるが,花子が言った場合と,桃子が言った場合とでは意味が違って取られる.ここに関係に関するメッセージの優位性がある.したがって,コミュニケーションでは,そのことを十分考慮しておく必要がある.
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