特集 「おいしく」食べよう—食事の見直しと看護の役割
快適な食事の演出—看護とのかかわりを考えながら
中村 丁次
1
,
川島 由起子
1
,
岡部 和彦
1
1聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院栄養部
pp.131-135
発行日 1988年2月1日
Published Date 1988/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921914
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快適な病院には快適な食事
私どもは,この世で生を受け死に至るまで,いろいろな場面で食事をする.家庭,職場,レストラン,ホテル,学校,公園,車中や路上,そして病院など.しかし,病院での食事は他の場合と比べ決定的に異なっている点がある.それは,病院での食事は医療の監視下に置かれ,疾病の予治,治療,そして増悪防止の一手段として利用されることである.つまり,本来人間の自然な食べる営みは,食べたい物を自由に食べ精神的な満足感を得て,その結果として摂取した飲食物の成分が生体の健康状態に影響を与えているわけだが,病院の食事ではこのプロセスが逆転してくる.食事成分が生体内に入りその結果がどうなるかを予測,計算して,摂取すべき内容を設定するようになるからである.
このように,病院の食事の一義的な目的の中には,食事をおいしくすることなど最初から入っていないのである.そのために,食事の提供は長年投薬と同レベルに考えられ,まずくても食べる努力をするように患者は説得された.「治療のために」という御旗を立てたために,食べやすい食事を提供する努力を怠ったのである.
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