特集 高齢者虐待への対応を学ぶ
特集5
虐待にかかわるときに必要な権利擁護の知識
池田 直樹
1
1大阪アドボカシー法健事務所
pp.391-395
発行日 2001年5月15日
Published Date 2001/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901311
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虐待の英訳語である「abuse」は「濫用,悪用」という意味にも使われます。本来の役割や権限を持つ者が,その地位に基づく裁量権や環境を利用し私欲のための逸脱行動に出ることを指すようです。しかし,実際の虐待事例を見れば,単に権限逸脱行為にとどまらず,明らかに違法で犯罪(crime)と評価すべき場合も含まれています。したがって,虐待行為に対処する場合にはスタンスの多様性が求められます。
権限内の行為であれば,基本的に権限ある者に委ね,第三者はみだりに干渉すべきではありません。しかし,犯罪と言える事態になれば,躊躇することなく権力的介入などにより侵害行為から救出する必要が生じます。そして,虐待はその中間に位置することになります。その中間領域では,不親切,不適切,不穏当,そして人権侵害「的」,また犯罪「的」な場合などがあり,嫌がらせ(harassment)も含まれ,それぞれに対して慎重かつ適切な関与が必要になります。
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