連載 生活の輪郭・第7回
大河を渡る人
尾山 直子
1
1桜新町アーバンクリニック在宅医療部
pp.1-3
発行日 2024年1月15日
Published Date 2024/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688202059
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まるで大河を渡っているようだ、と思った。
青信号が点滅する大通りの横断歩道を、シルバーカーを押しながら必死に歩く高齢女性を見かけたときのことである。信号待ちの車が列をなし、じりじりと横断歩道に圧をかけている。女性は必死ながらも確実な足取りで、赤信号が点灯する前になんとか渡り切り、堰き止められていた車の群れは、水が放流されるように一気に流れはじめた。わたしは、その光景から目が離せなかった。
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