随筆・紀行
渡る世間
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.184
発行日 2009年2月15日
Published Date 2009/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101900
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親元を離れて新潟の旧制高校に入った頃は宿舎は全寮制度で,全員一年間寮にぶちこまれることになっていた.芋洗い教育と称して生徒同士の切磋琢磨を目的としたもので,いわば憧れの生活ではあった.したがって,高下駄を履いて高吟しながら下界(街)を徘徊したり,戦局制あらず食糧乏しくなっても腹が空くと賄征伐と称して炊事場を襲ったりして結構楽しかった.もっとも新潟は他地に比して食糧難が遅く,受験生も寿司がまだ食える土地というだけで希望した者もいたという.
二年生になると大半は下宿屋に追いやられ,三年次は大学受験準備で大部分が寮を出た.私は二年次は寮委員として残り,三年次もわずか数名になった仲間と寮に残ったのを見ると余程この生活が気に入っていたのか,怠け者だったのであろう.
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