視座
海を渡る関節鏡
織田 弘美
1
1埼玉医科大学整形外科
pp.673
発行日 2014年8月25日
Published Date 2014/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408103116
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関節鏡は,膝関節を端緒として各関節に応用され,今や関節内の外傷や疾患の診断・治療には不可欠な医療器械として,広く普及している.日本人は独創性に乏しいと言われているが,関節鏡は日本の整形外科が生んだ最大の独創的業績であると言っても過言ではない.この度,埼玉医大所蔵の関節鏡が,ワシントンDC郊外の米国立健康医学博物館(National Museum of Health and Medicine)に展示されることになったので,その経緯をご紹介する.
関節鏡は,1931年に高木憲次東大整形外科第二代教授によって考案され,その後は1937年入局の渡辺正毅先生に引き継がれた.渡辺先生は,1949年に東京逓信病院に異動されたが,地道に研究を継続され,1959年に渡辺式21号型関節鏡を完成された.新興光器製作所から発売されたこの関節鏡は,世界初の実用関節鏡であり,現在の関節鏡のプロトタイプとなった.1964年にトロントから東大に留学したRobert Jackson先生が渡辺先生に関節鏡を教わり,帰国後,急速に欧米圏に広まった.その詳細は,Marlene DeMaio先生がClin Orthop Relat Res(471:2443-2448, 2013)に「Giants of Orthopaedic Surgery:Masaki Watanabe MD」と題する一文を書いておられるので,ぜひご一読いただきたい.
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