連載 広汎性発達障害の理解と援助・5
特性を理解して円滑な意思疎通を図る
細川 雅人
1
1大阪市城東区保健福祉センター
pp.704-707
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101409
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認知特性と心理特性
●視覚優位で言葉の意味を理解しにくい特性
脳科学者(解剖学者)の養老孟司が「唯脳論」で述べているように,時間を止めて認知する視覚に対して,一定の時間に変化する情報をひとまとまりにして認識するのが聴覚である。視覚と聴覚は全く情報認識パターンが異なり,しかも,いずれも常に変化してとどまらない。言葉は視覚や聴覚のような変化する情報から変化しない意味(同一性)を固定する役割を果たしており,人間は視覚と聴覚をつなぎあわせて同一性(言葉)で統合する能力をもっている。ところが,脳の特性から,広汎性発達障害者はその統合機能が十分にはたらかず,特に,聴覚情報の処理が難しいことから,結果的に視覚優位となる。
同じ言葉でも時と場合によって意味やニュアンスが違う。たとえば,「雨で足もとが悪い」と「足もとを見られないように」では,「足もと」がまったく違う意味で使われている。定型発達者は,話の文脈や話し手の表情,まわりの状況や過去の経験に照らして,瞬時にその意味をとらえることができる。これは,頭の中に辞書があって,「足もと」という項目にさまざまな用法や意味が蓄積されているからである。
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