特集 腹痛診療の達人になる
【腹痛患者をみる時に心がけていること―これが大切!】
意思疎通の難しい高齢患者から学んだ腹部診察法
神谷 亨
1
1洛和会音羽病院総合診療科・感染症科
pp.194-195
発行日 2010年3月15日
Published Date 2010/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101874
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高齢患者Aさんにまつわる苦い体験
卒後5年目になった頃,地方の病院で一般内科研修をしていた私は,何となく一通りのことができるようになった気でいた.ある時,脳梗塞で右不全麻痺,失語症があり,家で何とか伝い歩きをして過ごしていた73歳のAさんが,「元気がなくご飯を食べなくなった」とのことで奥さんに連れられて私の外来を受診した.
Aさんは普段から私の質問に簡単な単語レベルの返答しかできなかったが,その日は問いかけても返答は全くなく,車椅子のうえでうなだれてボーっと床をみつめているだけであった.元気がなく食事が摂れないため入院していただいた.発熱はなく,身体所見でもとくに異常はなく,血液検査で白血球とCRPが軽度に増加しているくらいで,肝機能,腎機能に異常はなかった.やむをえず,点滴をしながらしばらく経過観察することにした.その後2日間程同様の状態が続いた.
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