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はじめに
■表現術を実生活のコミュニケーションに活かす
演劇とは……人間と人間の,人間と社会との,人間と時代との関係を描く芸術……といってもいいでしょう。もっと簡単に「演劇とは人生ごっこである」といっても間違いではないでしょう。
少し考えただけでも,この最も人間くさい表現手段である演劇の表現術から,人間同士のコミュニケーション術に活かせるものがいくつも思い浮かびます。
「冗談じゃない,演劇はフィクションであり,実生活のコミュニケーションにそんな方法論なんて成立するわけがない!」という反論が聞こえてきそうです。
じゃあ,職場でも学校でもいい,ブレーンストーミングのように,みなさんが集団で話し合う場合と,芝居づくりの場合とを並べて考えてみましょう。
みなさんが話し合いを始める(稽古を始める)とき,進行役やリーダー(演出家)は,話し合うメンバー(役者たち)の緊張をほぐし,話しやすい(稽古がしやすい)雰囲気づくりをする必要があります。
メンバー(役者)には,気の強い人,気の弱い人,声の大きい人,声の小さい人,わがままな人,お節介な人と,実にさまざまです。でも,そんなメンバー(役者)によって,生き生きとした話し合い(演劇)を進めて(創り上げて)いくのがリーダー(演出家)の役割なのです。
話し合い(稽古)において,メンバー(役者)同士のコミュニケーションが大切であることは言うまでもありません。他のメンバー(相手役)の話(セリフ)を聞けないメンバー(役者)は困りものですが,これはよくあることで,びっくりすることはありません。しかし,何とかしなくてはなりません。
また,プレゼンテーション(本番)のときを考えてみましょう。
慣れないプレゼンテーション(本番)で,プレゼンテーター(役者)があがってしまい,うまくいかなくなることはよくあります。そのために十分な準備(稽古)が必要なのです。みんな(観客)にわかりやすい方法(演出やシナリオ)を工夫して,リハーサル(稽古)で話し方を検討する必要があります。
以上,話し合いやプレゼンテーションについてちょっと考えただけでも,演劇から盗めそうなものがたくさんあります。
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