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はじめに
ALSは進行性に経過し,四肢の運動障害,球麻痺,呼吸筋麻痺などが生じる。呼吸筋麻痺による換気不全で,多くは5年以内で死に至るとされているが,人工呼吸器を使用し,呼吸を補助することで,長期の療養が可能である。
しかし,すべてのALS患者が人工呼吸療法を選択するとは限らない。現在,呼吸筋麻痺の進行に対する人工呼吸療法としては,気管切開下での侵襲的人工呼吸療法(TPPV)と,マスク式の非侵襲的人工呼吸療法(NPPV)がある。以前は,呼吸筋麻痺の進行により,呼吸困難感という死を意識した状態で,療養者や家族は「気管切開下の人工呼吸器か,死か」という究極の選択を迫られた。
「気管切開はしない!」
「苦しい。やっぱり気管切開する!」
「いや,しない……」
「どうしよう? どうしたら良い?」
と,日ごと,時間ごとに変化することも珍しくなかった。人工呼吸器を装着することには違いないが,このNPPVの出現で,自己決定に少し猶予ができたように思える。
●当ステーションにおける状況
ステーション開設の平成8年8月から現在まで,ALSの利用者は17名(男性12名・女性5名)である(表1)。利用開始の時期は,ALSと確定診断されて退院する時期の方から,すでにTPPVで在宅療養中の方までさまざまである。
紹介のほとんどが主治医・保健師で,介護支援専門員からの依頼は1件である。17名のうち,人工呼吸器を装着された方は11名,ただし,NPPVまで,と選択された方が4名である。開設当初はTPPVの方が多くみられたが,最近は気管切開を希望されるケースは少ないように思える。当ステーションの周辺でも同様の傾向がみられる。人工呼吸器の装着に関しても,療養者や家族の意思決定はさまざまで,「延命のための処置は何もいらない」と強く主張され,嚥下障害が出ても,経管栄養すら拒否された方もあった。
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