連載 amans惠道通信・15
伴奏
飯島 惠道
1
1東昌寺
pp.244-245
発行日 2002年3月10日
Published Date 2002/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902364
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●ピアノ伴奏に支えられた 心に残るコンサート
私は趣味でヴァイオリンを弾く。決して上手くはないのだが,楽器を弾いている間は煩雑極まりない日常から逃れられるような気がして,それはそれでストレス発散に繋がっているように思う。「ヴァイオリンを弾く尼さん」ということでめずらしがられ,たいして上手くもないのに演奏依頼がくることがある。演奏と言っても「法話付きの演奏」だ。そういうときは,大抵,童謡・唱歌などをソロで演奏する。オーケストラの一員として弾くのは慣れているのだが,ソロとなると音を間違えたら一発でばれてしまうし,やはり度胸がいる。はじめのうちこそ不安のほうが大きかったが,今では「楽しけりゃ,それでいっか」と思いながら演奏している。
昨年の十一月下旬,ある団体の創立四○周年記念式典に呼ばれた。「ヴァイオリン演奏付きの講演」を依頼されていたため,ポピュラーな曲を何曲か用意していった。いつもと違ったのは,ピアノ伴奏がついたこと。ピアノを演奏するのは,その団体のリーダー役を務める方の娘さんで,東京にある音楽大学の一年生。「音大生って,プライド高そう」という先入観から,その方と逢うまではだいぶ緊張した私であったが,実際の彼女は,とても清楚で素直な感じのお嬢さんであったため,逢った瞬間にほっとした。「この人だったら,いい伴奏をしてくださるだろうな」と直感した。
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