連載 amans惠道通信・5
言葉の温度差
飯島 惠道
1
1東昌寺
pp.404-405
発行日 2001年5月10日
Published Date 2001/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901426
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●当り障りのない弔辞
温かな弔辞
職業柄,弔辞を耳にすることが多い。当然といえば当然だが,これほど数多くの弔辞が聞けるのは,葬祭業かお坊さんくらいのものであろう。私はまだ新米僧侶なので,「弔辞のスタンダードな文章」というのが,どのようなものかはよくわからないのだが,ベテランのお坊さんともなると,文章のスタイルによって,「この方は,○○系列の会社にお勤めだったんだな」とかいうことがわかるらしい。
冠婚葬祭というものは,非常にプライベートな出来事である反面,その人を取り巻く社会から切り離すことができない部分も多い。たとえば,「結婚」ということが,愛し合う二人の同意さえあれば成り立つというものではなく,背後に「家」を中心とした社会がつきまとうのと同じで,「本当に親しい人だけに参列していただいて,小さな葬式を出してもらって,あの世に旅立てれば,それで十分……」と,自分の意志に沿う形の葬儀の実現を強く願おうとも,社会がそれを許さないということはよくある。これが日本社会での葬儀の現実だ。
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