連載 amans惠道通信・10
なんにもないけど,おめでとござんして
飯島 惠道
1
1東昌寺
pp.824-825
発行日 2001年10月10日
Published Date 2001/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901320
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●時すでに遅し
七月十四日は祖母の誕生日。私が幼少の頃には,家族の誕生日には必ずバースデイケーキをいただいて祝ったものだが,最近ではそのような光景を目にすることは皆無に等しい。
昨年の誕生日で祖母は八〇歳。傘寿である。本来ならば,盛大にお祝いをしなければならないところであったが,なんだかんだと忙しく,なんの準備もできないまま当日を迎えた。その日の夕食の準備をしながら,母がぼそっとつぶやいた。「それにしても,今日はおばあちゃんの誕生日だっていうのに,なんも,ご馳走ないなあ……」と。たしかに,いつもと全く変わらない、野菜中心の質素なものであった。せめて花束ぐらいは用意すればよかった,と気付くも時すでに遅し。すぐさま買いに出る元気は全く残されていなかった。
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