特集 ケミカルハザードとしての抗癌剤―その安全管理をめぐる諸事情について
臨床医の立場からみた抗癌剤の副作用と安全性
大倉 久直
1
1国立がんセンター中央病院薬物療法部
pp.287-292
発行日 1992年9月15日
Published Date 1992/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901894
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はじめに
抗癌剤が,他の薬物よりも特別に危険なものと考える根拠は何だろう.「抗癌剤は強い癌細胞を殺すために作られた薬だから,きっと毒性が強いに違いない.それは治療を受けた患者さんに副作用で苦しむ人が多いことでもはっきりしている.だから,できるだけ抗癌剤に近寄らないようにしたい」と多くの人は考えている.科学的に説明しようとする人は,「抗癌剤には,細胞の代謝を止めたり殺したりする細胞毒性(cytotoxicity)と,突然変異を起こす変異原性(mutagenicity)を持つものが多く,さらにヒトや動物に癌を起こす発癌性(carcinogenicity)が証明されたものも含まれているので,他の薬よりも危険」と説明する.
抗癌剤の多くは投与された患者にさまざまな副作用を発現する.その中には,肝臓,腎臓,消化管,循環器,皮膚粘膜,神経,内分泌など種々臓器の細胞障害のほか,生殖細胞の増殖抑制,突然変異の誘発,2次癌の発生などがある.
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