対話による看護経済学のススメ・7
再論・看護の質とその評価
西村 周三
1
,
川島 みどり
2
1京都大学経済学部
2健和会臨床看護学研究所
pp.126-135
発行日 1992年3月15日
Published Date 1992/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901879
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川島 現在,病院を経営する側から見ると,看護婦は,数を増やせば増やすほど金がかかるだけで,病院としてはマイナスになる.また,別にいいケアをしなくてもいい,最低限のことをやっていればいいんだという考え方が根強くあって,その背景には,保助看法にうたわれている看護業務の中の「診療の補助」の方が重視され,療養上の世話,私たちがいわゆる「生活行動の援助」と呼んでいる仕事が,軽視されているのではないかという思いがあります.それから,看護婦自身の,建て前としては生活行動の援助こそが専門職として主体的になすべき仕事だと言いながらも,本音としてはそう思っていないのかもしれないジレンマがある,看護婦自身がそうですから,当然受け手の患者さんのほうも,病気を治しに入ってきたのだから,体を拭くことなどは二の次でいいという思いもあるんじゃないかなということがあって,「より良いケアって,いったい何なんだろうか」と思ってみたり,また身の回りの世話というと家事労働や主婦労働の評価と即直結して低くみられているのではないかという思いなどもあります.
そして一方,医療費の高騰ということが言われて,その抑制策を政府が講じてきているのだけれども,このような医療費の高騰の背景には高度医療の進展とか過剰な投薬,検査ということがあるわけですが,もし看護が本当にいいケアをし始めたら,検査や薬をかなり減らせるという仮説を強くもっています.
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