連載 amans惠道通信・14
拈華微笑
飯島 惠道
1
1東昌寺
pp.168-169
発行日 2002年2月10日
Published Date 2002/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901583
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●一枝の華に託された真理
仏教の開祖釈尊は,三五歳の十二月八日の明けの金星を見て大悟され,その後一生を通じて仏法を説かれた。ある時,弟子たちの前で,一本の華を手に取って示された。何も言わずに,ただ弟子たちに一枝の華を見せたのである。そこに集まったほとんどの弟子たちは,何のことかわからず黙っていたが,迦葉だ(かしょう)けがその意味を理解してにっこり微笑んだ。そのため,釈尊は迦葉を法の継承者と認め,彼に仏法を伝えた。これが釈尊から,第一番目の弟子への伝法(でんぽう)にまつわる故事であり,「粘華微笑」(ねんげ みしょう)(あるいは「世尊拈華」)(せそんねんげ)と言われている。
一枝の華を示すことで,釈尊は「仏教は,言説を超えた真理を説いている。言葉や文字にこだわっていると,真実(理)を見逃してしまう」ということを伝えられたのだ。
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