特集 看護倫理が医療を変える
医療現場における倫理とトランスレーショナル・リサーチ・コーディネーターの試み
大木 桃代
1
1文教大学人間科学部
pp.515-520
発行日 2001年7月10日
Published Date 2001/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901451
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はじめに
医療現場における倫理とはどういうものであろうか。さまざまな立場での意見はあっても,「倫理」という「言葉」としての定義はできるかもしれない。しかし,そのような概念を,現場において具体的にどう反映させていくかという実行の段階になると,それぞれの立場や個々人の意見,さらには場面による影響がいっそう反映し,一概に明言することは難しい。特に看護の立場における倫理は,まだ議論の途上であり1),今後の構築が待たれるところである。
本論では,臨床心理士としての立場から,2つの異なるタイプの医療現場における患者の権利と倫理について検討する。まず,臨床心理士が一般の病棟に介入していることの目的や現状を紹介する。次に,一般の医療現場における情報提示の問題点と,それに付随する倫理について論じる。そして,最後に,最先端医療の現場において,患者の権利を守るために発足した「トランスレーショナル・リサーチ・コーディネーター(TRC)」という試みを紹介し,このような特殊な現場における倫理について考察する。さらに,これらの現場において,臨床心理士と看護職者(以下,看護婦)が連携して効果を挙げたケースも紹介する。
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