連載 私が休日に出会った本・3
スローフードな暮らし方
加納 佳代子
1
1八千代病院看護部
pp.247
発行日 2001年3月10日
Published Date 2001/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901393
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大学生の娘が『eat』(コルヌコピア刊)というグラビア雑誌を買ってきた。昨年の10月に創刊した雑誌で,英語と日本語とで書かれている。「食」をいろいろな視点でとりあげる雑誌だそうだが,若い女がなまめかしくざくろを頬張っている赤と黒の表紙に,「誘惑,sex,果実,drug,祝祭,cake」と書いてあるので,本屋であれば,手に取るとき周囲の目をちょっと気にするだろう。が,我が家のリビングにおいてあるので,すぐ覗く。「食」文化の違いなんていう表向きのことだけでなく,人間の貧欲さ,思い入れ,本能,まあなんでもありという感じが興味をそそる。
この雑誌のアンケートに娘が答えたら『スローフードな人生! イタリアの食卓から始まる』(新潮社刊)がプレゼントされた。グルメものかな,とさして期待もせず読み始めたのだが、これがなかなか面白くてもうけもの!いや,味わいのある深遠な哲学。私はさっそく,作者あとがきの「とかくファーストこそは勝者なり,という競争原理が先に立つ現代にあって,いやいやどうして,スローこそは人類の新しき賢者の態度なのだよと居直る哲学なのだ」からアイデアを拝借,新年のご挨拶状にしてしまった。
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