特別記事
医療界と産業界の英知を結集する時代がやってきた―医療経済学者からみた医療事故対策
川渕 孝一
1
1東京医科歯科大学大学院
pp.790-795
発行日 2001年10月10日
Published Date 2001/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901314
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昨今,わが国では医療事故が急増している。そのため,いかに医療事故を防止するかが国民的課題となっている。医療事故の防止対策として,ヒヤリ・ハット報告から,さらに医療者の資質や教育,環境,システムに焦点を当て,また,事例検討による原因追求をするなど,医療現場ではさまざまな試みがなされている。
しかし,その対応等は必ずしも十分とは言えない。これは,(1)厳しい病院経営の現状,(2)国民の権利意識の高まり,(3)医療者の現状認識の鈍さ,(4)高度に医療技術が進むなかで医学・看護教育が旧態依然としていること,などが関連していると考えられる。こうしたさまざまな現実を目の当たりにして,起こるべくして起こっている事故も少なくない。これに対して,米国では,病院個々で,事故が起きた後の賠償による損失と,予防策への投資額を比較するなど,医療経済の視点から,事故を防ぐ取り組みが行なわれている。これからは,医療事故対策にも学際的なアプローチと,ミクロ,マクロ両面からの視点が求められる。
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